私はこれまで出身大学の関西医科大学附属病院などで一般外科、消化器外科、乳腺外科を中心に経験を積んで参りました。外科学は素晴らしい学問です。外科学の進歩はとどまることを知らず、私が医師になってからの短い間にも患者さんへの負担の少ない手術方法が次々と開発され広く普及しています。先人の苦労に思いを馳せつつ、先輩に御指導頂き、同年代の外科医と切磋琢磨しつつ、外科医として毎日腕を磨き、患者さんの命を救う充実感と、患者さんからの感謝の言葉を胸にこれまで外科診療に携わってきました。
しかし、どれだけ手術の腕を磨こうとも手術だけでは救えない命があることもまた事実です。信頼できるかかりつけ医がいれば、症状が出ているのに我慢せず早く相談していれば、提案された検査をきちんと定期的に受けていれば、手術で治せるうちにご紹介頂けたであろうのにと歯がゆい思いを抱かずにはいられない患者さんにもたくさんお会いしてきました。
このように充実した外科診療を行う一方で、胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡治療や乳がん検診など病気をより早期に発見し治療する仕事にも携わってきました。そこで発見した患者さんがより早い段階で病気を治して、いっそう元気にされている姿もたくさん見させて頂きました。例えば大腸がんは大腸ポリープから発生するとされていますが、ポリープのうちに内視鏡で切除すれば日帰り手術で治すことができます。しかし大腸がんの手術となると少なくとも1週間の入院が必要になり、術後の体力の回復も数か月かかることも少なくありません。
そのような毎日を過ごすうちに病気の早期発見の大切さを再認識するようになりました。そして「難易度の高い手術を長時間かけて行うより、侵襲の少ない安全な治療を数多く提供することが、より多くの人々が健康で明るく暮らせる社会を実現できる近道である」との思いに至りました。日本は先進国のなかでも健康診断受診率が低いといわれています。大学病院で培った知識と技術をより多くの人々に提供し、健診受診率を上げるためにはどうすればいいかと考えに考えを重ねた結果、自分自身のクリニックを持ち、持てる能力を最大限に発揮することが自分にできる最高の社会貢献になるとの結論に至りました。適切な時期に必要な検査を患者さんに負担をかけることなく安全に行うことのできるかかりつけ医として、よりたくさんの人の生活の質の向上や安定に貢献できる医療を提供するために大石クリニックを開院することにしました。